高知の祭り

高知の祭り目次

HOME

前ページ

次ページ

御神穀様(久礼八幡宮秋季大祭) (H16.9.27〜28)



御神穀様の大松明


謂れ書

土佐三大祭り(中土佐町の御神穀(おみこく)様、仁淀村の秋葉(あきば)様、高知市一宮の志那祢(しなね)様)のひとつ、久礼八幡宮の秋季大祭が9月27,28日に行われました。

久礼は故青柳裕介氏の漫画「土佐の一本釣り」の舞台になった港町で、町の中の「大正市場」は、新鮮な魚や干物を遠くから買いに来る人気の市場です。かつおの本場ならではというわけでしょう、漁師さんたちはカツオのタタキには一家言あります。

御神穀様は字の通り、お米の収穫を喜びあうもので、今年取れたばかりの新米で酒・餅を作り神に供える豊作感謝のお祭りです。

農業者も漁業者もともに祭りを支えあっています。


呼び物は27日午前0時から行われる祭りの幕開け「御神穀様」の大松明。

深夜の町を大松明が火の粉を散らしながら、八幡宮へ向かって練り歩くのです。


人気のない神殿


道路わきの灯篭


お祭り好きな友人と3人で26日19時半頃、中土佐町へ向けて出発しました。


途中、土佐市あたりから雨になり、須崎の道の駅に着いた頃は土砂降り。しばらく様子を見ていると、やや小降りになったので目的地へ向かいました。

予め調べてあった今年の「頭屋(とうや)」・長沢地区の公民館へ、初めての夜の道を行き過ぎたり戻ったりしながら22時頃にたどり着きました。

雨は止んでいました。

道沿いには、道しるべのように灯篭が吊られています。



公民館のなかでは、地区の皆さんが賑やかに会食中。

庭には大松明が準備され、雨よけのテントをかぶせてありました。

点火を待つ大松明


境内は水溜まり


松明の点火・出発は1時半の予定と聞き、八幡宮周辺を見に行きました。

祭りらしくはなやかに提灯の灯りがともされていますが、境内には水溜りが出来ていました。


夜店もずらっと陣取ってビニールシートで雨の用意をしてあります。


本殿の左に輪抜け石がありました。

途中でひっかかったらどうしよう?と心配しながら、誰もいないことを良いことに戯れにくぐってみました。

成功です! きっと厄除けのご利益があることでしょう!


そして、この雨では、頭屋での点火から大松明について歩くことはできないと判断、町の中心部へ移動し駐車場所を確保。車の中で雨の勢いが弱まることをひたすら祈っていました。


輪抜け石


松明に火をつけなおす


1時を過ぎると、太鼓の音が聞こえ始めました。

近くで太鼓が止まったようだったので、雨着をつけ傘をさして車から出ると、すぐ隣まできていました。

10人ほどの若者たちが、雨で消えた松明(大松明ではありません)に火をつけなおしていました。

太鼓は透明ビニールにすっぽりおおわれた状態で、「ドンドンドン、ドンドンドン」と打たれます。

「叩いてみんかね、一緒にいかんかね」

若者たちのこの人懐っこさ、優しさ!

傘やカメラを持っていなかったら、大喜びで叩かせてもらったろうに、残念でした。


2時を過ぎると見物人も増えてきました。それでも、昨年の人出と比べると寂しいものです。

大松明がやってきた


雨が強く燻る大松明

 


屈強な男たちに守られて

あちこちの商店の庇で雨宿りする形で待つうちに、隣に、地元の方と思われる方がいたので、話しかけてみました。

『この雨じゃ可哀想やなあ、僕らが太鼓を叩いたのは高校生だった、未成年は酒を飲まれんので今じゃ高校生はやってないが、年に一度のまつりだから、勢いあまって喧嘩もするし、怪我することもある、前は、怪我しても何も言わなかった、頭屋は部落持ち回りで、10数年に一度しか回って来ない、高校を出てから20年以上東京にいるが、この神祭に帰ってくるのが楽しみ、今でも、松明は担ぎたいなあ、「♪一條さん〜♪一條さん〜♪」と歌いながら担いだもんや、太鼓はもうよう叩かん、あれはきつい、若いうちじゃないとできん、大松明の長さは部落によってちがうようじゃねえ、お宮までの距離が部落ごとに違うから、昔から部落によって長さは違うねえ、お宮へ4時に入るように段取りして松明が来るが、もう大分近くまできたようじゃねえ、ちょっと行ってみてこうか、ほんなら。』

ほどなく、西のほうから賑やかな太鼓が聞こえ、行列がきたようです。

神官さんや、巫女さん、榊、酒、餅、米俵、そのほか色んなお供え物や松明を持った人が、進んでは止まってしんがりの大松明を待ちます。


大松明は、松を中心に束ね、その周りに竹を並べて束ね、直径1メートル長さ6メートル、重さは1トンもあるというものです。


中心街へ来た大松明

 


雨の中の神主と巫女さん

数十人の男衆が担いでは休み、交代しては担ぎしてお宮への道を練るのです。

晴れているときは火の勢いは凄いのですが、今夜は大雨で、消えてしまうことはないにしても、焔は小さかったようです。それでも、沿道の人はバケツに水を用意して、燃え落ちた火の始末などに走っていました。


八幡宮の前まで来ると、社殿とは反対側の浜の方へいき、松明を据え付けて一段落。

それから社殿へ入るにふさわしい長さまで切り落としたりして燃やします。その間に、各部落からきた太鼓衆が、唄をうたい、相手をけなしたりしながらぶつかり、喧嘩をします。その頃には、雨にもめげず、見物人は膨れ上がり、熱気はぐんぐん上がってきました。

4時、雨が止み、行列はしずしずと社殿に入り、最後に大松明が社殿に駆け込んでいきます。

そして、神事のあと、また大松明は社殿から運び出され、人々はそれに群がり、燃え残りの松明を競って拾います。

鳥居の前で一休み


喧嘩を仕掛ける太鼓


これを持っていると、豊作・豊漁・商売繁盛・無病息災など、なにくれとご利益があるということです。

ウロウロしていると、若衆が「持っていたら良いことがあるよ、どうぞ!」といって3本の木をくれました。

素直にありがたがって、2本は周りの人におすそ分け。


こうして、御神穀様の大松明行事は終わります。

人々は家に帰り、一眠りした後で、おなばれや餅投げや花火を楽しみ、翌日は中秋の名月にちなんだ行事の予定だったようですが、台風21号がらみで月も隠れていたようでした。


       


燃え残りを取りにいく人たち


 目次  TOP 前ページ 次ページ