高知の祭り

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室戸市吉良川町 御田祭 (H17.5.3)



浜辺で行う練り



青竹に花を飾って祭りを迎える家

5月3日、吉良川町の御田八幡宮で「御田祭」が行われました。

この祭りの起源は古く、鎌倉時代の田楽能や猿楽能を今に伝えるもので、国の重要無形民俗文化財に指定されています。

また、田楽能の演目の中の「酒しぼり」では、杜氏婆が生んだ神の子を子宝を望む女性たちが奪い合ういう子宝信仰でも知られています。

御田祭は文字通り稲作の農作業(田作りから収穫まで)を15の演目にして演ずる田楽能。五穀豊穣を祈って2年に一度奉納されます。

10月に行われる例祭(神祭)のような賑々しい華やかさはありませんが、カメラマンなど大勢の見物人が集まり、家々は軒下に花などを飾って祭りを迎えます。


お茶の接待をする少女たち


清めの水を汲む

八幡宮の前の「おまつり館」の庭では、お茶席が設けられ、昔懐かしいお饅頭を蒸すにおいが漂ってくる中、振袖姿のお嬢さんがお茶の接待をしていました。


祭りは早朝の「練り」から始まります。

一文字笠をかぶった8人の氏子たちが「ささら」を手にし、「ヨッピンピーロ」「ヨッピンピーロ」と唱えながら手足を動かして田を練る所作を「練り」といいます。

8人は、神事の後、ゆかりの社寺を巡回して練っていきます。そして、家々で出迎えてくれる一人ひとりに一文字笠を差しかけて福を分け合います。

午後、浜での練りのあと、海で「清めの水」を汲んで本殿へ戻り、午後1時、いよいよ拝殿での祭りが始まります。


道を清めながら神社へ向かう一文字笠の練りの一行



進行役の「殿」と「カシャ」

羽織着流しの殿が長い刀をつけて扇子であおぎながら悠然と登場。

「カシャ!カシャ!」(・・(冠者?)と呼びます。

間をおいて
「ハイ! ハイ!」
カシャはのんびりと登場。

殿がカシャに次の演目を耳打ちし、別れ際にカシャの頭を扇子で叩くと、すかさずカシャは殿の刀を撥ね上げて仕返しをします。



殿は退場、カシャは

「次は○○○をやりますぜよ」と舞台から三方に告げます。

というように演目が替わるたびに、殿とカシャが出てきて出し物の案内をします。

いわば、司会進行役というところでしょうか。


舞台では「練り」、下では祈る人



女猿楽 

浜で汲んできた清めの水は、演目が替わるたびに榊で振って舞台を清めます。

まずは『練り』。午前中の練りの総仕上げというところでしょうか。

次いで『女猿楽』(苗取り)

『三番神』(12人の地謡:囃子手が着座)

『翁』  (同上)


三番神




『牛』(従順な牛だが時に牛使いに歯向かったりします)



『田打』(鍬を使う)


『えぶり指し』(田を平らにする道具。「そうとめ(早乙女)よう、そうとめよう」と呼びます)




田打ち


えぶり指し



田植え



酒絞り 人形争奪戦


『田植え』(早乙女12人と早乙女テガイ12人、賑やかできらびやかな舞台です)



『酒絞り』(子宝祈願の女性たちの人形争奪戦)



『田刈り』(鎌を使う)


子宝祈願


田刈り



『小林』(小林上野守是成の幽霊が戦の武功を演じます)

『魚釣り』(観客に向けて魚のついた釣り糸を投げます。魚に触れるとご利益があるとか)

『地堅め』(舞の最後に左手を上げて、一般参加者に「再来年ござれ!」と叫び、祭りの正規行事の終了を告げます)


小林


魚釣り


地堅め


そして『太刀踊り』を最後に奉納して4時過ぎに御田祭の行事は終了します。

祭りの雰囲気に浸っていると、テンポの速い合理的な現代社会からは考えられないようなおおらかなゆとりとスローな様式美をたっぷりと味わうことができました。


        


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