西国三十三所
結縁御開帳 巡拝の旅

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西国三十三所結縁御開帳 巡拝の旅その3 (H20.11.8〜9)


紅葉の奈良公園


暦の季節も体に感じる季節も冬に入りました。

天気予報は雲や傘マーク、奈良は高知より北で盆地。
ということで寒さ対策を充分にして出かけましたが、やはり高知と比べると気温はかなり低いようでした。

柏原ICを下りてから見る風景には衒いがなく、どこか素朴で懐かしさを感じました。

「大和三山って何々やったかねえ?」

「あれ、古墳じゃない?」

「石舞台がチラッと見えたよ!」

古の都の地、多くの遺跡を車窓から楽しみながら壺坂山へやってきました。


第6番 壷坂山 壷坂寺(つぼさかでら)

第6番 壺坂山 壺坂寺(つぼさかでら)

住 所 奈良県高市郡高取町壺坂3

ご本尊 十一面千手千眼観世音菩薩

開 基 弁基上人

御詠歌 岩をたて 水をたたえて 壺阪の 庭にいさごも 浄土なるらん



壺坂寺


堂塔は多くが新しく、小雨で暗い日でしたが、朱色が明るい雰囲気を醸しています。



眼病に霊験あらたかな観音様として信仰を集め、明治の頃、失明回復祈願にまつわる沢一・お里の夫婦愛を描いた浄瑠璃「壺坂霊験記」が巷に共感を呼び、さらに信仰が広がったそうです。


大きな眼鏡



大観音像と大涅槃像


また、インドでのハンセン病患者救済活動のご縁から、インドから招来された高さ20mの大観音石像・大釈迦如来石像・大涅槃石像・大石堂など、シルクロードの香り豊かな天竺渡来の巨大な石造物が目を引きます。


ご本尊は、毎日ご開帳されています。


大釈迦如来像と大石堂と壺坂寺の堂塔


仏の言葉豆知識「心は工(たくみ)なる画師の如く種々の五薀(ごうん)を描く・・・・・「西国巡礼慈悲の道」より

鏡を見ると自分の顔が見えるが、毎日同じ顔が映っている訳ではない。悲しい気持ちの時には悲しそうな顔、怒りの気持ちの時には怒った顔。

たとえば平常に見せようと思っても、心の感情は自然に顔ににじみ出てくるものである。

従って、悪い考えの人はそういう顔となり、よい心を持った人は仏の顔になっていくものなのである。


第7番 東光寺 岡寺(おかでら)


第7番 東光山 岡寺(おかでら)

住 所 奈良県高市郡明日香村岡806

ご本尊 如意輪観世音菩薩

開 基 義淵僧正

御詠歌 けさ見れば つゆ岡寺の 庭の苔 さながら瑠璃の 光なりけり



岡寺への上り道


壺坂寺からバスで20分。落ち葉の坂道を上がるとぱっとひらけて岡寺へ到着です。


鎌倉時代初期の「水鏡」のはじめに、<厄年には二月の初午の日に岡寺へお参りすると良い>旨、書かれ、当時すでに定着していたことから、岡寺は日本で一番旧い厄除け霊場であるとされています。




それは、開祖・義淵僧正が、民を苦しめていた悪龍を法力で寺の池に封じ込めたことから始まったと言われています。(このことから岡寺は龍蓋寺とも呼ばれます)


岡寺本堂



岡寺三重塔


境内には巨大なサツキの古木やシャクナゲの木がたくさんあり、4月から6月頃は花が楽しめそうです。


ご本尊は、毎日ご開帳されています。


仏の言葉豆知識 「六道(ろくどう)」・・・・・「西国巡礼慈悲の道」より

自らの行為(業)により次の世に生まれる(転生)六種の世界。

悪業により生まれる世界が地獄道・餓鬼道・畜生道の三つ(三悪道)で、善業により生まれる世界が修羅道・人間道・天道の三つ(三善道)。合わせて六道になる。

これらへの転生は生前の罪業により十人の王に裁かれる。その内の一人が有名な閻魔王である。地蔵菩薩と同じく観世音菩薩も六道の人々を救う仏様である。


この日は長谷寺温泉で宿泊、ぽかぽかと温まりましたが、大きなお宿の建物は、土地の起伏に合わせた建造で、迷路のような廊下に戸惑ったことでした。


番外 法起院(西国巡拝開基・徳道上人御廟所)


番外 法起院 (ほうきいん)

住 所 奈良県桜井市初瀬776

創 立 徳道上人

御詠歌 極楽はよそにはあらじ わがこころ おなじ蓮(はちす)のへだてやはある



小雨の降る朝、宿を出て、古いたたずまいの門前町を長谷寺に向けていくと法起院はすぐ近くにありました。

西国三十三所霊場巡礼の風習は、718年、仮死状態のなか、閻魔大王の啓示で巡礼を思い立ち、甦った徳道上人によって始められ、270年後、花山法王が復興されたそうです。


法起院



法起院のタラヨウに書かれた願い事


当院は上人晩年の隠棲地で、寂びたたたずまいが心に沁みる庵でした。


第8番 豊山 長谷寺


第8番 豊山 長谷寺(はせでら)

住 所 奈良県桜井市初瀬731−1


ご本尊 十一面観世音菩薩

開 基 徳道上人


御詠歌 いくたびも 参る心は はつせ寺 山もちかいも 深き谷川



長谷寺山門



長谷寺登廊


門前町は古い町並みで、参詣気分に浸りきって、みやげ物や看板、何を見ても心が温もってくる思いがしました。


長谷寺は「花のお寺」として知られ、一年を通じて季節の花に彩られているようですが、今は、花はなく、紅葉には少し早い状態でした。

境内は広い山で、本堂へ続く長い登廊(のぼりろう)は屋根付きの回廊で、両側のいたるところに牡丹などが手入れされており、牡丹のころの美しさはいかばかりかと思いを馳せましたが、ちょうど花の端境期であることが残念でした。




国宝の大きな本堂は徳川家光の寄進によるもので、前面の懸造りの舞台からは境内の堂塔はじめ遠くの市街地がみわたせる大建造物です。





長谷寺五重塔


色づき始めた楓(長谷寺本堂から)


身の丈三丈三尺(10m余)のご本尊は、毎日ご開帳されています。


本堂から五重塔へ向かっていくと真新しい弘法大師御影堂がありなにやら嬉しく般若心経を唱えさせていただきました。




十月桜でしょうか


サンシュユの実


仏の言葉豆知識「山川(さんせん)は長くして萬世(ばんせ)也,人は短くして百年也」・・・・・「西国巡礼慈悲の道」より

山の存在や川の流れは永遠であるが、人の命は、たとえ百年生きられたとしても短いものである。人間の存在は小さいもの。だからこそ、つまらないことに惑わされ、刹那的な欲望に囚われて生きてはならない。

人生をもう一度見つめ直し、心豊かに歩んで行きたいものである。



第9番 興福寺 南円堂


第9番 興福寺 南円堂(こうふくじ なんえんどう)

住 所 奈良市登大路町48


ご本尊 不空羂索観世音菩薩

開 基 藤原冬嗣

御詠歌 春の日は 南円堂に かがやきて 三笠の山に 晴るるうす雲



一大観光地・興福寺はたくさんの観光客で賑わっていました。

天平の文化、古都奈良のシンボル「五重塔」は内陣公開を待つ黒山の人々。


興福寺五重塔



興福寺南円堂



南円堂も六角形の建物の周りは順番待ちの人が大勢いました。



右近の橘が綺麗に色づいて、待ち時間もそれなりに楽しいものでした。


本尊の不空羂索観世音菩薩は鎌倉時代のもので国宝、同じく国宝の四天王立像が四隅に安置されています。


南円堂前の右近の橘



大仏殿


観音様の手に繋がる糸に触れて、ちょっぴりときめきを感じるのもいいものです。

ご本尊は毎年10月17日にご開帳されます。(今年に限り10/17〜11/24)


仏の言葉豆知識 「阿頼耶識(あらやしき)」・・・・「西国巡礼慈悲の道」より

私たちの心は、意識と無意識による重層構造になっている。阿頼耶識とは、その無意識の領域の一番深い部分のこと。

阿頼耶とは、古代インド語のアーラヤを漢字で音写したもので、意味は「蔵」。

その蔵には、何が収められているのか。端的にいえば、私たち自身の今までのあらゆる行為の情報が収蔵されているという。

そういう過去を背負って、私たちは今を生きている。




今回は四つの札所と一つの番外の5ヶ所をゆっくり回りました。


鹿たち



落葉


最後の奈良公園で、バスの出発時間まで2時間自由時間がありましたが、国立博物館は1時間以上の待ち時間という長い行列、2月堂も3月堂も大仏殿も戒壇院も鹿も、どれもみな絵葉書を見るような感じがして、早々とバスに乗り込んだことでした。


          麗


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