遍路紀行

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遍路紀行 その13 民宿坂口屋〜平等寺 (H16.9.17)



彼岸花

16年9月17日 


超大型台風18号が日本列島を縦断し、各地に大きな被害をもたらしました。


秋の味覚、リンゴやナシがたくさん落果したとか。一年がかりで育て上げこれから収穫という時に、無残に落ちた果実を見る生産者の無念さを思うと言葉もありません。

しかし、それでも時は進みます。

連続台風もようやく一段落し、残暑のきびしさの中にも時に涼しい夜もあり、季節は確実に秋へと移り始めました。

前日の16日、高知は一体何事が?というような、激しい雷雨に見舞われました。

そして、17日、雨着の用意もして高知を8時に出発しましたが、またまた天気は好転し、歩き日和になりました。天地の神に感謝です。

彼岸花


彼岸花

途中、レストランでの昼食のお弁当に、娘たちの大好きな可愛いお芋がはいっていました。

それがまたおいしかったこと!

前回の到達地、民宿坂口屋を歩き始めたのは13時ころ。

単調なカーブの多い舗装路を、秋の陽に射られながら歩きます。


「左・一列になって歩いてください」

前回から来てくださっている先達さんが言います。

一行29名のうち27名は左側一列歩行になりましたが、男女各1名が右側歩行を止めません。


遍路休憩所(ここから山道へ)


遍路道しるべ



「車は左、人は右でしょ」
「お大師様は左側を歩きました」
この二人、かなりのいごっそうらしく、その後も車道では右側歩行を続けました。



ところで、田んぼの畦や草地では、今を盛りと彼岸花が咲いています。

スックと茎を伸ばし、真っ赤な花びらと蘂を広げ群がって咲く様は妖しいほどにきれいでした。

どこへ行っても彼岸花の群生は見られ、その都度、その都度、感激しました。



やがて車道を右折し、路傍の遍路休憩所で記帳して、遍路道となり山へ入っていきます。

栗林にさしかかると栗のイガがいたるところに落ちていました。

中身は空っぽで実はひとつもありません。
きっと、猿かリスなどが食べたのでしょう。

ようやく笑い始めた栗をひとつ木の中に見つけました。

遍路道の彼岸花


栗の実


野菊


棗(なつめ)

少しきつい登り道も、いつの間にか峠を過ぎて下り始めました。

「あそこが大根峠だったのか」

大根峠はひとつの目標地点でしたが、さしたる難所でもないからでしょうか、標識も無く、気付かないうちに通り過ぎていました。

やがて川沿いの車道にでると、どこからか鐘の音が聞こえ、平等寺が近いことを教えてくれます。

彼岸花の他にも、鶏頭やキバナノコスモスやカクトラノオなどの秋の花が民家の庭を彩り、棗(なつめ)も色づき始めていました。



ほどなく目的地、22番平等寺に着きました。7.5キロ、2時間ほどでした。

この寺の名は、お大師さまが「すべての人が幸福になれるように、又すべての人を救済できるように」とつけられたと言われています。


平等寺山門


本堂


緑濃い白水山を背負う形で寺があり、本堂はかなり高いところにあります。


階段を上がり、山門で礼をして境内に入り、手を清め、
鐘を撞き、さらに急な階段を上がると古めかしい本堂に着きました。


この本堂の中に3台の古い「遍路車」が保管されています。


屋根付きで木箱の板を打ち合わせたような遍路車で、大正末期から昭和初期のものです。

立てなくてこの車を家族に引いてもらって遍路をしていた人が、ここ平等寺で霊験を得、立てるようになったので、遍路車を奉納したということです。

このうちの1台は高知県土佐郡地蔵寺の33歳の男性のものだそうです。


奉納された3台の遍路車


大師堂

本堂を下りたところ、観音堂のそばの井戸は大師が掘ったもので、乳白色の水が湧き出てきたため、山に白水と言う名がつけられたといわれます。

この水は万病に効く霊水「弘法の水」と呼ばれ、みな汲んで帰るとか。汲んでみましたが、乳白色ではなく、澄み切った水でした。

大師堂はこの井戸の左手にあります。どの堂塔もこじんまりとしていますが、かなり古く、長い歴史を感じさせるものです。


お参りを済ませて帰ろうとすると、山門の日陰にシェパードが横になっていました。

この犬は歩き始めからずっといっしょに歩いてくれたとか、娘たちとはすっかり仲良しになって、だれかれの記念撮影に納まっていました。

え?これで終わり?
歩いてお参りをして2時間半!
もう帰るの?

歩き足りなくてなんだか不完全燃焼気分でした。


同行のシェパード



夕方の吉野川堤防

でも、高知からここ阿南市まで徳島回りだと4時間ちかくかかるので、日帰り遍路では止むを得ないことなのです。

それにしても、厳しい残暑で、汗びっしょり。えびすの湯でさっぱりしたらもう夕刻。

バスの中から見る吉野川の堤防は、散歩やジョギングの人々が夕空を背景にしたシルエットとなっていて、日の入りの早くなったことを知りました。

          娘遍路


娘遍路の独り言  犬に暖かくお接待を受けたの巻


すっかりひきこもっていました。しかしインターネットは、毎日楽しく感心しながら拝見しておりました。歩き遍路も管理人さんのさりげないエールに励まされ頑張って遍路を続けております。ご安心下さい。

現在3人の娘遍路は、原則同じ日に歩いていますが、第13回は私だけ1日あとのコースでした。雨も降ってきました。遍路紀行の写真の休憩所で、1匹の野良犬が雨に濡れながら我々を迎えてくれました。これから山道にさしかかろうとしている時、迷わず平等寺までたどり着けるよう案内をしようと待っていてくれたのです。

管直人さんも案内をされまして、この犬にたいそう感心し名前が無いならおまえは今日から遍路君だと命名したそうです。その案内ぶりはとても堂にいっていて、後ろを振り返り振り返り歩いたり、途中で遅い人を待ってあげたり、又山を下りたら畑仕事をしているお婆さんの所へ小走りにいって挨拶をするかのような行動をします。私たちが般若心経を唱えている間にもういなくなっていました。


次の案内の為に今きた山を引き返したのでしょう。犬に暖かくお接待を受けたの巻。


                        娘遍路 乙女ねえやん

  

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