遍路紀行

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遍路紀行その70 高野山奥の院めぐり(高野山町石道)
(20.3.14〜3.15)


雨の町石道



セリバオウレン


今回は、高野山の奥に眠る弘法大師に、四国の遍路道を歩き終えることができた報告とお礼の「高野山奥の院参り」です。

高知を7時に出発。

明石海峡大橋を渡り、高野町矢立に着いたのは予定より1時間遅れの15時。

生憎の雨でしたが、町石道を60町石から1町石目指して歩きます。


高野山へ入る7つの道のうち、表参道は慈尊院を起点とする高野山町石道であり、この道は、大師が雨引山麓(慈尊院)にいる年老いた母御前を訪ねて月に9回も訪ねて行ったという山道です。


1丁(およそ109M)毎に立てられた石柱(当初は木造の卒塔婆だったとか)は、高野山・金剛峰寺1町石からはじまり、慈尊院は180町石となっています。

700年以上も前に建てられ風雨を耐えてきた石柱が150本も現存します。

この<慈尊院〜町石道〜高野山>は、平成16年に「紀伊山地の霊場と参詣道」として世界遺産に登録されています。


町石



雨に煙る大門

さて、勇み山道へ入るや、浅春のセリバオウレンの花の出迎えに心が和みました。

長旅のあとの単調な山道ですが、少し歩けば町石があり、「袈裟掛石」「押上石」「鏡石」などの伝説の岩もありで、退屈することはありません。

雨の山道を6、5キロ、巨大な「大門」へ着いたのは17時になっていました。

金剛峰寺の境内には掻き寄せた雪が残り、標高900Mの高地であることを思わせます。



大門のお仁王様


大門のお仁王様



高野に残る雪


今回泊めていただいたのは宿坊・遍照尊院です。

夕食の際には「般若湯(おさけ)」や「麦般若(ビール)」は飲んでもよろしいとのこと、フツーのお宿と変わらない面もありましたが、朝6時からの勤行があるのは、やはり寺院ならでは、です。


1町石



夕暮れて宿坊へ


早朝の勤行、朝食の後、金剛峰寺へ向かいます。

霊場・高野山は一山境内地で、平たく言えば高野の山全体がお寺(高野山)の境内、その中に、100以上のお寺(小院)があり、その他にも多くの塔頭があるのです。

では、高野山へのお参りはどこで?

総本山・金剛峰寺は、高野山全体を総轄し、真言宗の総本山として信仰の中心だとか。


余りにも偉大で、歴史的文化的重要建造物を見学しに来たかのような印象です。



遍照尊院での朝のお勤め



昨日の雨水を抱いた苔


壇上伽藍の「金堂」「根本大塔」「「御影堂」。


どれもこれも偉大で、参拝というよりは、走り走りの観光めぐりの感は否めません。


根本大塔



苔むした墓石




町石道の場所


さて、目的の奥の院へ。


霊気溢れる鬱蒼とした木立の陰に、徳川・豊臣・明智・石田などなど、歴史に名を残した人々の苔むした墓石が並ぶ中を進み、弘法大師御廟へ到着。

仏前勤行も感無量。

そして、御詠歌。




中央の燈籠堂の裏に大師御廟
 手前御廟橋から脱帽・撮影禁止




御詠歌は、道中のバスの中での「一夜漬け」でしたが、大師の墓前で詠っていると胸にこみ上げてくるものがあり、充分に満たされた気持ちになりました。



♪ ありがたや 高野の山の 岩陰に 大師はいまだ おわしますなる〜 ♪ 


自らが詠う侘びた旋律に感動し、ひとつの到達を実感したと思いました。


下り道



蛇行する紀ノ川


それから、矢立までバス移動。


高野山町石道を60町石から180町石まで、およそ13キロをひたすら歩き、慈尊院へ到着、そそくさとお参りをしました。



女人結縁の寺とも女人高野とも言われ、有吉佐和子さんの小説「紀ノ川」にも出てくるこの慈尊院をもう少し味わいたかったのですが、昨日1時間、加えて今日半時間の遅れで余裕は全くなく、直ちにバスに乗ります。

大阪湾に沈む夕日がきれいでした。


どうにかこうにか家に帰り着いたのは23時を過ぎていました。

ヒメオドリコソウ



慈尊院で参拝

「4年2ヶ月、弘法大師の歩いた道をなぞり、結願の報告を大師の墓前にしてきた」

遍路とは、私にとって何だったのでしょう?

全てをありのままに受け入れることが、理屈ではなくできるようになっただろうか?

自然に逆らわずいつも感謝することが、理屈ではなくできるようになっただろうか?

自の幸せよりひとの幸せを願うことが、理屈ではなくできるようになっただろうか?

少なくとも、明日からの毎日が、遍路道を歩いている時にそうであったように、心豊かな時間が多くなるようでありたいと思っています。

この間、同行の仲間達は勿論のこと、行く先々の地元の方たちから暖かく接していただきました。


また、この拙い遍路紀行を見てくださった方々からは熱い声援をいただきました。

家で自分の身の回りのことだけをして暮らしていては得ることがなかった貴重な体験をさせていただきました。

こころから感謝の気持ちを申し上げたいと思います。

ありがとうございます。

         娘遍路


大阪湾の入日


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